三好庸隆

かつて手がけた「新しいまち」
今、再びともしびを灯す

三好庸隆

教授/生活環境学部長

住環境・まちづくり領域

Profile

大阪大学工学部建築工学科卒業。IAESTE(国際学生技術研修協会)の海外交換派遣研修生としてイギリス・ハーローニュータウン開発公社へ在籍後、大阪大学大学院の博士前期課程を修了。
専門家として長きにわたり都市・建築設計の実務に携わりつつ、諸外国の視察を重ねる。
1988年に(株)PPI計画・設計研究所を設立し、2007年度より本学教授。その間大阪大学招聘教授を歴任。博士(工学)、一級建築士。
最近の著書としては『オールドニュータウンを活かす!-理想都市の系譜から多様な暮らし方の実現へ』(大阪大学出版会)がある。

かつての憧れの住まいにも、多くの課題が訪れる

1970年代から、都市プランナーとして関西のニュータウンを中心に多くのニュータウンづくりに関わってきました。これらのニュータウンは、戦後の住宅不足を解消するために、大都市近郊で計画的に作られた新しいまちです。多くの若い家族が集まり、豊かな暮らしを夢見た場所でもありました。

私はそのまちづくりの専門家として、多くのニュータウンの創設に関わり、総合的に街を作り上げる大規模な設計にやりがいを感じていました。しかし長い年月を経た現在、ライフスタイルや価値観の変化により暮らしの在り方が変わり、ニュータウンの多くが高齢化や施設の老朽化といった課題に直面しています。

まちの記憶と未来をつなぐ。設計者としての使命感

日本は現在、人口減少と少子高齢化という大きな転換期を迎え、生活環境も大きく変化。自動運転や生成AIなどの技術革新が進み、私たちの生活空間や働き方にも変化が訪れています。都市計画も、これまでの「つくるための仕組み」だけでは対応しきれなくなってきました。まちづくりは今、単にハード面を大量生産する時代を越え、「ソフト面」で新たな価値を創造する段階へと移りました。

そんな中にあって、私を駆り立てる原動力は「設計に関わったまちに、新たな活気をともしたい」という思い。人々の暮らしは一世代だけで終わるものではなく、時代に合わせて変容し続ける必要があるのです。私は、ニュータウンの抱える課題を解決し、再生と活性化を実現する方法を研究し、社会課題を踏まえたクリエイティブな提案を行っています。

暮らしに寄り添うまちづくりの力とは

以前のまちづくりは「たくさん建てる」ことが重視されましたが、今はそれだけでは地域は元気になりません。大切なのは「今あるまちをどう生かすか」の視点と、暮らしに寄り添う柔軟な対応力です。

私の具体的なアプローチとしては、たとえば行政職員向けに具体的な考え方やアイデアを提供しています。また大阪・豊能町で行ったアクションでは、1970年代に整備された公園を、子育て世代のニーズに合わせて再設計しました。

地域の人々と何度も話し合い、その思いを形にしていく。その過程に都市計画の本当の力を感じます。人口減少が進む町では、地域の魅力を保ち続けるための課題解決が求められていますが、そうした変化に柔軟に対応する力こそが、まちづくりの本質であると感じています。

「つくる」から「育てる」へ。住民が主役のまちづくりを

都市計画というと難しそうに思えるかもしれませんが、その本質はシンプルです。

「人が心地よく暮らせる環境をどうつくるか」。人口減少と価値観の多様化が進む現代、都市計画には「つくる」だけでなく「育てる」ことが必要です。社会が変化する中、既存の町をどう活かし、暮らしやすさを高めるかを考えることが求められています。

制度や法律の見直しも含めて、新しいまちづくりの形を模索していかなくてはなりません。今ある町を生かし、変化を前向きに受けとめながら、人が生き生きと暮らせる未来を描く。私はそのためのアクションをこれからも続けていきます。

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