岸川洋紀

人の心理も調査・分析
環境リスク対策が見えてくる

岸川洋紀

教授

住環境・まちづくり領域

Profile

京都大学大学院工学研究科 都市環境工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。
同志社大学大学院総合政策科学研究科特別研究員を経て現職。
専門分野は「環境リスクや環境行動について」。環境因子による健康影響評価のほか、環境リスクに対する人の心理・行動やリスクコミュニケーション研究に従事。

心理をデータ化して分析。
環境リスクを管理する

誰しも、自分や家族、大切な人の暮らし周りは安全・安心な環境であってほしいと思うもの。私たちの暮らしは、より便利で豊かになる一方で、さまざまな環境リスクも高まり続けています。環境リスクとは、自然災害や環境汚染、有害性の高い化合物を含む生活用品などが原因で、人の健康や環境に生じる悪影響のことです。研究では環境リスクを解決に導くための評価・管理に加え、人間がリスクをどう認識し、感じるかといった心理的側面からもアプローチし分析に取り組んでいます。

人が「どう感じるか」への
関心が研究のおもしろさに

私が環境リスクを研究対象としたきっかけは、学生時代にさかのぼります。当時は、環境問題が国内外で注目され、環境への取り組みが豊かな生活環境を実現するために重要であると人びとの間でより強く認識された頃です。私自身、関心のあった環境問題を人の心理や行動をからめながら解明していくことにおもしろさを感じ、環境リスクに取り組む先生がいる研究室を選択しました。環境リスクは「モノ」である物質を科学的に捉える研究と人間がリスクをどう感じどう向き合うかという研究の2つの側面から考えることができます。科学的な環境問題への取り組みでは「モノ」の評価が主であり人間の心理については主観的な問題であるとして、工学的な手法を研究する学科においてはあまり注目されてきませんでした。しかし、さまざまな環境下で実際に暮らすのは人間ですので、「どう感じるか」の調査は欠かせないものだと思っていたところ、自分の興味・関心にもっとも近いことができそうな研究室を選択することになりました。

人の心は揺れ動くもの。
正しい測定方法を探る

人は、リスクが高く危険なものを怖いと感じ、危険が低ければ「大丈夫」と思う生き物です。しかし、実際に調査してみると逆の結果になることがあり、かつその声が大きくなると、本来危険であるはずのリスクが見過ごされ、対策につながらない可能性をはらんでいます。また健康影響に関する情報だけを元にリスク基準を厳格にすると、社会や経済に不利益が生じてしまうことも課題とされています。環境もそこに暮らす人の「感じ方」もそれぞれです。それらを踏まえ、あらゆる調査手法から人の反応を正しく測定し、議論を深めることが重要だと考えています。

他の分野の研究者たちと
課題解決に挑戦したい

環境リスクは私たちの生活の中に必ず存在しています。学生には、物を買う・食べるといった日常の行動が環境リスクにつながることにもっと関心を持ってもち、安全・安心な生活環境を実現することを意識してほしいと考えています。環境リスクを評価する手法や、人の心理反応を測定する手法は、さまざまな分野に活用できます。私の目標は、フィールドが異なる他分野の人たちと一緒に課題解決に取り組むこと。そのための教育や体制作りを進めながら、誰もが少しでも安心し、納得して暮らせる社会を作りたいと思っています。

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