「誰もが分かる」を目指す!
ICT で被服実習に改革を
末弘由佳理
Profile
兵庫県の公立高等学校教諭、夙川学院短期大学専任講師を経て、2008年より本学に着任。
被服構成学、被服材料学、教科教育学(家庭科教育)を専門とする。
高等学校での教員経験を生かし、近年は小・中・高等学校および大学におけるICT教材の活用に関する研究に取り組んでいる。
教員としての悩みが研究の出発点に
かつて私は高校で家庭科を教えていました。なかでも特に課題を感じていたのが、被服製作の実習です。生徒によって得意・不得意の差が大きく、一斉指導ではなかなかうまく伝わらない場面が多くありました。指導者の手元が見えづらく、黒板の文字も読みにくい。質問しづらい空気が漂う中で、被服製作が苦手な生徒ほど学びにくさを感じていたと思います。
そうした経験から、「誰もが理解できる仕組みをつくりたい」「できたという実感を持ってほしい」という思いが強くなりました。この実感こそ、私の研究の出発点です。
大学教員として再び教育に向き合うなかで、高校教諭としての経験が、ICT教材の開発へとつながりました。実習で戸惑う場面を少しでも減らし、すべての学生が被服の楽しさや達成感を味わえるように・・・その思いが、今の私の研究を支えています。

ICTで変わる実習の場。教材の力で学びを支援
被服製作の学びをよりわかりやすく、そしてすべての学習者に開かれたものにするため、ICT教材の開発と活用に関する研究を進めています。
ICT教材とは、インターネットや動画を活用して学習できるデジタルコンテンツです。私がこの分野に取り組み始めたのは2009年のことでした。授業での「伝わりにくさ」を感じ、スライド資料にアニメーションを加えた教材を制作したのが始まりです。繰り返し視聴できる教材は、学生から特に好評でした。
当初は学内のLMS(eラーニングシステム)を通して教材を提供していましたが、時代の変化に合わせ、2019年からはより開かれた学びの場としてYouTubeでの公開へと発展しました。コロナ禍以降は、全国の先生方から「授業で使いたい」との声を多くいただき、教材の活用が広がっています。現在は、教材の開発に加え、教師がICT教材を効果的に活用できるよう支援する活動にも取り組んでいます。

全ての人に「伸びる学び」のチャンスを
私の研究の根底にあるのは、学生が自由に、そして楽しく学べる環境を作りたいという願いです。ICT教材を使うことで、どんな学習者でも自分のペースで学べるように工夫を重ねています。最近ではアパレルCADを学ぶ書籍と、それに連動したICT教材を制作しました。視覚的に学ぶのが得意な学生、音声を使った方が理解しやすい学生など、さまざまな学習スタイルに対応した内容になっています。また学生向けの教材だけでなく、指導する教員向けのWebサイトも立ち上げ、全国どこでも質の高い教育が受けられる仕組み作りを進めています。将来的には、家庭科に限らず、全ての教科のICT教材を全国的に活用できる「教材バンク」の実現を目指しています。教育の格差をなくし、どこに住んでいても質の高い学びを受けられる環境を子どもたちに提供したい。それが私の描く夢であり、研究活動の最終的な目標です。
教材の詳細や公開動画は、以下のサイトからご覧いただけます。
ICT教材
- 基礎縫い
https://www.mukogawa-u.ac.jp/~kateika/kyozai_digital.html - 製図
https://www.mukogawa-u.ac.jp/~kateika/seizu_digital.html - アパレルCAD
https://sites.google.com/view/ict-cad/top
先生向け参考サイト
- ICT教材からみる指導上のポイント
https://sites.google.com/view/mukogawa-ict-hihuku/top